あの後、美音に送るって言ったら断られて家の人が迎えに来て帰っていった
そして今朝を迎えた
そして今駅にいる
そして今目の前に美音がいる
…美音がいる
イヤホンをしてまっすぐ前を向いて
周りの音は周りの存在はすべてシャットアウト
自分だけの世界
俺はその世界に踏み込む覚悟を必要としていた
「はよ…」
隣に立って、美音の方は見ない
ただ同じように前をまっすぐ見るだけ
それでも彼女は気づく
「おはよう」
昨日と違い、比較的柔らかくなったその声色と表情に少し嬉しくなった自分がいた
それだけ
電車が滑り込んできても
その電車に乗り込んでも
会話は無い
でも、それでいい
今はそれだけで十分だ
それに、美音はイヤホンをしまった
それだけで俺は心が温かくなる
…バカみたい
てかバカだ
自分に吐き気がする