「奏音さん?」
「え?あ、ごめん。なんでもない」
浅葱が首をかしげる。
私は首を振って応えた。
ちょっと、疲れたのかな?
「もっと早く、わかってたらよかった。・・・父さんともっと、話をしたかった」
「・・・信一・・・。すまなかった。すまなかった・・・。父さんも、もっとお前と・・・」
もうその後の言葉は、涙で聞こえなかった。
今だから気づけることもある。
後悔、することはあるかもしれない。
それでも・・・。
気づけたことは、きっとこれからの糧になる。
徳永さんの身体を光が包む。
「浅葱・・・」
「ああ。時が、来たんだ」
徳永さんが、消えていく。
その表情はとても、満たされた顔だった。