「奏音さん・・・」



後ろから、伺うような声が聞こえる。
私は顔をあげ、躊躇いながら振り向いた。




「あの、僕・・・何か、怒らせるようなことをしてしまったみたいで」




私が何で怒ったのか、浅葱は気づいていないんだ。
きっと、あれは事故だったんだ。

私が、そんなことで怒ってるなんて思ってない。
私って、なんて気が小さいんだろう。

そして、どうして怒ってるんだろう。




「ごめん。浅葱は何も悪くないよ。私がちょっと早とちりしちゃっただけ」

「早とちり?」

「うん。心さんは?」

「もう、帰ったよ。いつも、突然現れては嵐のように去っていくんだ」



浅葱がほほ笑む。
きっと、心さんは浅葱に会いに来てる。

あんなに、好きアピール激しいのに、浅葱は気づいていないの?
それとも気づいていて華麗にスルーしてるんだろうか。