『おめでとう!
ちゃんと、覚えてた?
そう。ここは、私と浩太が初めて会った桜の木のした。
新入生同士だった私たちが、フラフラと立ち寄ったこの場所で初めて言葉を交わしたんだよね。
最初の印象は、なんか、ボーッとした人だな。でした(笑)
浩太はどうだった?

次は、初めてデートした場所の入り口です。 ゆめか』




桜の木にもたれかかり、それを呼んだ池野さん。
口元にかすかな笑みが浮かぶ。

それを見て、浅葱と顔を見合わせて笑う。




「印象・・・。そうだな、桜の精かと思った」

「ふふっ、なにそれ」




池野さんの言葉に、ゆめかさんが噴き出した。
聞こえない声の代わりに、私が言葉に変える。



「どういう、意味ですか?」

「あ、ああ・・・。風で桜が舞っていてその中に、ぽつんと桜を見上げながら立っていたんだ。綺麗だった・・・」



懐かしむように桜の木を見上げる。
今は桜なんて咲いていないけど、そこには桜が舞っているような気がした。




「そこで、俺が一目惚れしてさ。もうアタック。・・・半年して、ようやくオッケーもらえてさ。ガッツポーズして喜んだのを覚えてる」



池野さんの視線が私に向かい、そう言って笑った。
池野さんの笑顔。
ゆめかさんが見たかった、笑顔だよ。