少しずつ私の話をしよう。



私は、名前がない。
正確には、あるのだけれどそれを背負って生きたくはない。


だから、出会った人に名前を決めてもらっていた。



時には、空。
時には、風香。
時には、琴音。


いろんな私がいて、
いろんな見られ方をして。


名前は、私の象徴。




不思議と、脆いような、
形にできない名前が多かった。


鈴音なんかもそう。
音には、色があるらしい。
それを人は、音色と呼ぶ。



風には、香りがあるらしい。
私には、少し違うんじゃないかと思うけれどでも、風には香りがあるらしい。




私が彼らの前に顔を出すのは…
私があーちゃんの前に顔を出すのは。
あーちゃんが私を求めている時だけだ。