サラサラと音を立てて、
髪は手からすり抜ける。



音一つ立てずにまた、
心も崩れていく。




「アホ。もう泣くな。」


目を閉じたままそういうあーちゃんの声に驚き、思わず手を引っ込める。




そしてその手を引いて、
そっと抱き寄せる。



「あーちゃん…?」




「好きだよ。」




「うん。」



「俺の言葉なんて、信用しないでね。」



「そんなの、」



わかってるよ。





苦しくて言えなかった。
だから、その度に笑った。



愛さなきゃ良かったのかな。
愛せば良かったと言うのだろうか。

後悔も時間も記憶も流されて
いつかどこかで何も知らないまま出会えたならと、どこかで淡い期待をした。