「恋人、できたってそれ何。」



「あー、でも、あーちゃんはどうでもいいんじゃないの?」



「へえ。お幸せに!」



ずるい。
こんなのってあんまりだよ。
こんなのって、



「じゃあ、なんで抱きしめるのよ。」



「知らねえよ。」



「何なの、本当になんなの?愛せない辛さ強すぎるんじゃあないの?同じ土台に立ったほうが楽かと思ったけど、違うの?」


「相手は俺のこと知ってんの?」


「あーちゃんのことっていうよりは、誰か好きな人がいるでしょって。でも徐々に俺のことも愛してくれたらって。」



「いい人じゃん。お幸せにね!」



「じゃあ、なんで、なんで抱きしめるのよ。なんで、なんで?ねえ、な」



「振りほどけよ。それで、終わりでいいんじゃねえの。」




「あーちゃんなんて。あーちゃんなんて」


その言葉の先もないけれど、
ただ口にした。


嫌いなわけない。
好きじゃないだなんて言えない。


「本当に馬鹿だな、本当にお前が一番馬鹿だよ。」


振り向くより先に、抱かれた腕を掴んでだきしめた。



あーちゃんはより一層力を入れて、
私も強く抱いた。



もうすぐ、朝が来る。



私の知ってる世界は動き出す。
それにまた揉まれながら、
傷ついて傷つけてを繰り返し続ける。




日に当たる世界は辛辣で、
だけど私たちの関係も異質で。



弾き出されたままの駒は、
孤独を強いられたとしても、
拒む術もない。




あーちゃん、ごめんね。



世界中の音を拾って、
苦しさも楽しさも拾って、
誰にでも寄り添って
誰よりも傷ついたあなたを、


ひどく愛してしまった。



惨めな、私の話。