あーちゃんはいつもそっぽ向いて本を読む。同じ部屋にいても、私なんかいないように空っぽの空間で、淡々と黙々と。


「あーちゃん!あーちゃん!」
「んー」
「ねえ、あーちゃん、好きだよ。」
「んー、黙って。」


あしらわれるのも嬉しくて、
話せることが、そばに入れることがただただ嬉しくて、私もずっと下手な笑顔を見せていた。


1年前、彼を置いて私は消えた。



触れないように目を向けないように、
ひっそり息を殺して生きていた。


恋も愛も消そうと笑って、
他の男と生きていた。


彼を好きでいることが酷く辛くて逃げたと、そう周りは思っていそうでだけど、実際は、そうじゃない。


いろいろあったわけで、
だけどそれを言い訳がましく言うつもりも、受け入れてもらうつもりもない。



「ねえ、あーちゃん。」
「好き。」
「好きだよ。」

一方的な言葉が、宙で遊ぶ。
彼は、私が手を離せば追ってはこない。
そういう関係だから。
そういう、そういう。




彼にとって私は、そういう存在だから。