月もない夜、施錠された図書館の前、向かいあって今にも反復横飛びでも始めそうな男女の姿は、傍から見たら異様だと思う。だけど、本人たちは至ってまじめだ。
何せ、緊張に満ちた告白の現場である。
第三者が見たら、多分、カバディ現場だろうけど。
及び腰で車に逃げ込もうとする近藤さんから視線をそらさず、強い調子で私は言った。


「次じゃなく、今、お答えします」


「え! そんな!」


「てか、なんで今聞きたくないんですか!?」


「いや、聞きたくないわけじゃ…」


「露骨に逃げる気満々でしょうが!」


「ヤワなハートを守るための勇気ある撤退だ!」


「何言ってんだあんた!」


勇気の使いどころ間違えてんだろ、と言いたいのを飲み込み、私は勢いよく近藤さんの右腕を掴んだ。
一瞬「俺、うまいこと言った」みたいな顔した近藤さんが、そのせいで反応が遅れ、まんまと腕を掴まれてしまう。しまった、という顔を、ぐいと見上げて私は怒鳴った。


「これからどうぞよろしく!」