あ、特技はあることはあるのよ。でもポテトチップス一袋を15秒で食べられますなんて、忘年会の一発芸でしか役に立たない特技しかもってないの。履歴書にも書けないわ(ウケるかもしれないと思って実は書いたことがある。でも普通にスルーされてしまって恥かしいだけだった)。
初めは親も嫌な顔をしていたけど、今ではアルバイトとはいえ一応仕事はしているし、少々だけど食費くらいは家に入れているし、変わりに家事をしてくれるならと32歳フリーターの娘を受け入れている。
だから、もう焦らずに、と思いながら、昼は歯医者の受付アルバイト、夕方から夜にかけて居酒屋のアルバイト、をしている私だった。
結婚しよう、それも出来たら恋愛からスタートしたい、という希望を捨て去った私は、むしろさばさばと毎日を過ごせていた。
焦った目で男を見なくなった。人を羨むのをやめたので、眉間の皺も肌のくすみもマシになってきた。
長い不倫時代から育ててきたネガティブの花だって、もうすぐ枯らせそうってところまでには健康な精神も蘇ってきつつあった。
そして今年の3月の終わり、そう、あの夜。
私の人生を激変させる事件が起きたのだ。
その事件の名は―――――――同窓会。
私の、ではなく、私の母の、高校時代の同窓会なんてものがあったのだ。
同窓会は夕方からなのに、その前にお友達とランチよ~と機嫌よく出かけて行った母は、そこで久しぶりに若いときの親友に出会った。