住宅街に入り人通りが少なくなった所で立ち止まった私に気付いたのだろう。彼は振り向いて

「どうした?」

っと言った。
いつもは大好きなその優しい笑顔を見るのは今日はとっても辛い。出来れば別れなんて言いたくないし、このままそばに居たい。

でも駄目なんだ。

私は彼を解放しなくては…



「あのね、」

「うん」



「私達、別れよ?」





少しの沈黙。
彼の顔は怖くて見れなかった。

彼に何か言われるのも怖くなってまた口を開いた。

「…だって、私、遠くの大学行くでしょ?会えなくなったりしたら、私やっていける自信ないし、きっとすれ違いも増えると思うの…」

すると彼が答えた。

「それが麻由の本心なら俺は何も言わないよ。俺は好きだからって麻由を縛るような事はしたくないから。」


あぁ、なんて心の綺麗な人。
思えばあの時も私の見方になってくれたな、と昔の事を思い出して泣きそうになる。