「ここが、学生寮か…ここもスッゲーでかいな」



 まだスッゲーって言うのか、このバカ兄は。


 ただそんなことよりも、そのスッゲーでかい寮の一歩手前で、私はすっかり立ち竦んでしまっていた。



「…柚季、大丈夫?」



 風太が心配そうに私の顔を覗き込む。


 うん、自分で決めたことだ。覚悟はできている。



「…行こう、風太。」



 ごくりと唾を飲み込み、歯を食いしばり、


 "男子寮"へと、足を踏み入れた。