心と体が一体にならない。今の晴が、まさしくこの状態だった。学校に遅刻しそうな焦り、原チャより遙かに強大なトルクとスピード、そして空から降り出した大粒の雨。この全てが、歯車が狂った時計のように、晴の自由を奪っていった。
―――うわっとっと。
半帽のメットでは、吹き付ける雨を受け入れるしかなかった。手にあたる雨も、小石があたったかのように痛い。
信号が赤になった。
「先輩のバイクは絶対にこかせないぞ。」
そう言いながら、バイクのタンクを軽く叩いた。