「結城くんと親しくしているなら、結城くんの本当の笑顔が戻るまで支えてあげて」

女の人は綺麗な長い黒髪をそっと、耳に掛けて微笑む。

「あの、わたし……結城さんとは……」

「結城くんは特定の人(彼女)は作らないって噂されているけれど、彼の小説は人の優しさや温もり、絆を描いているわ。寂しさを抱えて1番苦しんでいるのは彼だと思うの」

「……どうして、わたしに? そんなことを」

「どうしてかしら? でも、彼が他人を病院に付き添わせたのは、たぶんあなたが初めてではないかしら」

フフっと静かに笑った女の人の、穏やかな顔をじっと見つめる。

「ごめんなさいね、困惑させてしまって」

一礼し去っていく女の人に、わたしは立ち上がり深く頭を下げた。

ただ……なんとなく、そうしていた。