「ただ単に、声を出せないだけではないみたいだし、体も弱いから無理をさせられないみたい」

「精神的なってことですか?」

「それもあるみたいね。彼、心療カウンセラーも受けているから」

「あの……」

「ごめんなさい。わたし、彼に仕事を教わっていたの。たった数ヶ月だったけれど」

「えっ!?」

「彼ね、意地悪な女子社員から体を張って守ってくれたの」

「結城さんが……」

「結城くんの熱烈なファンで社長秘書だった女性。結城くんにふられて逆恨みして、資料室に……呼び出されてカッターナイフで脅されたの。結城くんに近づかないでって」

「社長秘書の……って──確か、浅田……」

同期入社の秘書課の女子が、確かそんな話をしていたのを思い出した。

「結城くん、左手の甲……小指と薬指の上あたりに凄い傷があるでしょう!?」