――和泉、せっかく残業がないのに真っ直ぐ帰宅か?

「はい」


――花の金曜日に1人過ごすのは勿体ないだろ?


「結城さんだって、お1人じゃないですか」


――そうだな、1人で食べる夕飯は美味しくないな


結城さんがちょっぴり寂しそうな表情でメモを見せる。

青信号で車を走らせる結城さんの後ろ姿も、寂しそうに見えてくる。

次の信号待ち。

――何線に乗るんだ? そろそろ病院の近くなんだが……

結城さんがメモを見せる。

「あのリハビリの後、ご迷惑でなければ……夕飯を一緒に食べませんか?」

突拍子もない返答をしたなと思う。

結城さんが後ろを振り返り、困惑したような顔をする。

そして大きなため息をつき、前に向き直る。

呆れさせたかなと、俯き「すみません」と呟く。

再び動き出した車は数十メートル直進し、左折する。