「すみません、遅くなりました。本当にすみません」

わたしは結城さんに言われた通りに、深々と頭を下げて平謝りする。

結城さんは、わたしの肩を軽く叩いて田中さんの前に出る。


――すみません。カフェで具合が悪くて踞ってるところを和泉さんに声をかけられて。病院へまで付き添ってもらって、助かりました


「カフェの店長から、お電話をいただいたわ」


――彼女が機転を利かせてくれなかったら、ちょっとヤバかったです。医者に喧しいほど叱られました


田中さんが「まあ、和泉さん。貴女でも役に立つのね」みたいな顔で、わたしを見る。


――田中さん、総務部の有能なルーキーの手を煩わせてしまって、すみませんでした


結城さんはメモを素早く鞄に押し込み、田中さんの手をそっと両手でとり、爽やかに優しく微笑む。