「でも、遅れたらマズイですから」



――時間稼いでやろうか?


「!? どういう……」


――ランチの店の前で、俺が倒れたところに出くわした……って


「えーーっ!?」


――店長に頼んで、総務のお局様に電話入れてもらえば信じるだろ


「でも……」


――実は梅川先生と西村先生の仕事がハードだったんで、少し体調がヤバいんだ


俺は卓上のベルを押す。

和泉が眉を下げ、心配そうに俺を見ている。


――薬、飲んだから大丈夫だとは思うけど


付け加えて、酸素を吸う。

アルバイトの店員が急ぎ足で席の前に立ち、「何かご用でしょうか」と訊ねる。

俺は酸素を吸いながら、メモ用紙にサラサラと簡単な事情を書き、サッとスマホを手渡す。


「本当に電話してもらうんですか?」

和泉はまだ、信じていないようだが、アルバイトの店員はスマホとメモを手に、カウンター奥へと消えた。