「マニュアルの上書きですか」


――ああ、もっとも社内システムの変更なんて、簡単にできない。
現状であたふたして、毎日残業の状態では課内も、まともに見えちゃいないだろうな


俺は申し訳なさそうに俯いた和泉が気の毒で、これ以上は仕事に触れまいと思った。

俺は筆談しながら、スプレー缶式の酸素ボンベを口に当て、何度も酸素を吸う。


「結城さんは仕事、楽しいですか?」


――ああ、総務部に居たころは先輩の焦った顔をみるのが面白かったし、マニュアル変更やシステム改善はやりがいがあった。
今は担当する作家の作品が形になるたび、達成感がある


「結城さんは嫌がらせとか苛めとか……されたことってあります?」


――ああ、たびたび。秘書課の女とは色々あったし、総務部では毎日、書類の山だった。
今だって、社内外から在らぬ噂を立てられてるし、迷惑メールや脅迫文、盗聴、ストーカーまでいる