――あのさ、俺も入社当初は総務部だった


和泉はハッとし、口元を慌てて手で隠す。


――マニュアル化された仕事を、ただこなすだけなんてつまらないと思った。
効率の悪さをそのまま改善もせず、文句ばかり言われていたくないと思った。悔しくてたまらなかった


「結城さん!?」


――書類の流れ、伝達の順番、手際の悪さ、何もかもが気に入らなかった。
マニュアル通りになどやってられるかと思った


「結城さん、マニュアルを無視したんですか」


――いや、マニュアルより効率的に最短で最善のやり方を考えた。
今、総務部に伝わっているマニュアルは、俺が4年前に変えたマニュアルだ


「えーーっ!?」


――マニュアルに完璧なんてない。
日々世の中は進化する。パソコンだって、音声入力で文章が作れるんだ。進化に合わせて、マニュアルには上書きが必要だと思わないか?