「だって、スゴくおいしいから」


――喜んでもらえてよかった。
気になってたんだ。傘とコートを返してくれた時、どこか辛そうで


「……あ、」

和泉の箸が止まり、顔が強張る。



――すまない。食事の時に


「いえ……気にかけていただいてたなんて」



――TATSUYAでバイトしてた、あの頃の方が生き生きしていた


「――!? 覚えていてくださってたんですか」


――うちの会社に入社してるとは思わなかったけど



「わたし、結城さんに会いたくて入社試験受けたんです。まさか合格するとは思いませんでしたけど」


――そんな浮かれた気持ちで


「万萬詩悠の生の原稿を読みたくて」

俺はふうっと長く息を吐き出す。

呆れてメモを書く気にもならない。


「総務部配属でガッカリですけど」