「お茶がわり……ですか」

定食を待ちながら、和泉の百面相に気持ちが和む。


あいつとは全く違うのに……思いながら、気が泡立つ。


運ばれてきた日替わり定食に、和泉の顔がパッと明るくなる。


「わあ~、きれい。純和食なんですね」

手鞠寿司にしたご飯、だし巻き卵、白和え、なすの味噌田楽、蕪の千枚漬け……など薄味の上品な味付けで少しずつ、碁盤の目のように仕切られた彩り豊かな品の数々。

丁寧な細工と盛り付けを見つめている和泉。


――品数はあるけれど、あっさりしてるだろ? 小さい店だし、路地の奥に入り込んでいるから行列もないし


「はい、穴場ですね」

箸を休めて、こたえる和泉の笑顔が、もういないあいつと重なり、「紗世」と呼びそうになる。


「結城さん!? どうかしましたか?」


――いや、美味しそうに食べるなと思って