入り組んだ場所と言われても仕方ない。

大正デモクラシー時代のカフェ~を似せた喫茶店は、店の灯りがランタン風で暖かい。


「レトロっぽさがスゴく和みますね」


――だろう!?


和泉は席について、暫し店内を見回し柔らかく微笑む。


「壁に掛かってる絵の女性、優しそうで綺麗ですね。着物がスゴく似合っていて」


――竹久夢二の絵だ。儚げな中にも芯の強さを秘めた優しさがある


「モデルがいるんですかね」


――道ならぬ恋だ。モデルの女性は人妻だったらしい


「そうなんですか?」


――「宵待草」という歌、知らないか?


「宵待草ですか?」


――「待てど暮らせど来ぬ人を……」という、歌詞の日本音階の歌なんだが


「何となく聞いたことがあるような」


――日替りランチでいいか?


「あっ、はい」

和泉に確認し、注文を取りにきた店員に、メモを見せる。