エレベーターの中。
2人きりだった時、間近に見た顔。

長い睫毛、メモを差し出した長く形の良い綺麗な指。

爽やかに香ってきたグリーンノートの香り。

着崩して緩めたネクタイに、肘まで袖まくりした細身の黒スーツ。

入社して半月。
1日に2度も、結城さんに会えるなんて……夢みたい。

思わず頬をつねってみる。

「痛いっ、リアルに痛いじゃないの」

何処でもドアで、即行ご対面したいなんて思ってしまう。

あなたの蜜に、惹かれて飛んでいくカブトムシにでもなった気分。

両手でしっかり持って、胸にしっかり抱えたパソコン。

これが結城さんの使っているパソコン。

ぎゅーっと抱きしめたくなってしまう。

ヤバい。私、頬が火照ってる。

自然に顔がニヤけていくのがわかる。

エレベーターの中、誰も乗って来ないでと祈る。