俺が万萬詩悠のペンネームで、作家をしていることをいち早く気づいていた1人でもある。

俺「結城由樹」に「万萬詩悠」のゴーストライター疑惑がかかった時、疑惑を全面否定してくれたのも西村だ。

エロとセクハラさえなければなと、染々思う。


「西村先生はどうだった?」

俺が席に着くなり、黒田さんが訊ねる。


……原稿に色々と難有りで、問題を箇条書きして渡してきました。次回は明後日、伺います


「そう、大変ね」


……ん、大変なのは彼のセクハラかな

黒田さんは、クスクス笑う。

俺は鞄から、パソコンとファイルを取り出し、作業を始める。

西村邸に寄る前、訪ねたハードボイルド作家「梅川百冬」の 汚文字原稿と、パソコン入力した文章を照らし合わせチェックしていく。


「結城課長」

外出前、今日中にと校正練習を兼ねて、部員「加納」に任せた書類。

不安げに差し出されて、目を通す。