「結城くん、儂は君となら夜を明かしてもと思うんだが」


――先生、俺はノーマルですから

書類一式、パソコンなどを鞄に素早く詰めて、俺は西村邸を出る。

皇居が見えると嘯く平屋建ての邸宅、手入れの行き届いた日本庭園、こんな静かな環境で執筆できる西村が羨ましい。

車に乗り庭園を抜け、100メートル余り走り、門柱に辿り着く。

込み入った路地を抜け、国道に出ると、街路樹の紅葉が美しい。

危なかったなと思う。
エロおやじとは、よく言ったものだ。

悩ましい君は抱きたくなる……などと、胸ぐらに手を入れる。

セクハラだろう!?

声が出せるなら、思い切り喚いてもいいんだぞと思いつつ、車を走らせる。

作品自体は臨場感もあり、トリックも巧みでテンポがよく、好みの作家だ。

西村は物わかりもいいし、俺自身の体調もあり、何かと世話になっている。