……気持ち悪いこと言わないでくださいよ。同情はしますけど


「寂しい人だよな。小説の中でしか、男性を愛せないなんてな」


……俺も似たようなものかな。紗世が居なくなってからは、美人見てもときめかない


「バカ……お前の中には、まだ彼女が居るんだよ」


あれから……俺は喋れなくなったままだ。
リハビリの効果が全くない。

声帯が麻痺し、声を出そうとしても振動しない――機能していないらしい。

神経が声を出すのを拒絶しているみたいに。

度々、フラッシュバックする光景は悪夢のようで、冷や汗がでるほどだ。

未だに眠れない夜を過ごす。睡眠薬も効かない。

やってはいけないが、睡眠薬をワインで流し込んで、やっと眠る。

相田さんの話を聞きながら、俺と沢山江梨子は似ているのかもしれない。

ふと、思ってみる。


……相田さん、沢山江梨子に謝っておいてください