「行ってきます。先生をよろしくお願いします」


「いつもすみませんね、結城さん」

メイドが酸素吸入をセットし終えた俺に、申し訳なさげに言う。


……いえ

内心、そうだよ。お前の主には毎回、痛い目にあってるよと、苦言1つも咬ましてやりたい。


「編集長。由樹、沢山先生ん家で倒れて、まだ調子悪そうなんで直帰させます。家まで送っていきますんで」

相田さんは編集長に、電話して車を発進させる。


「由樹、家に着いたら起こしてやるから、休んでていい。家には姉さん、いるのか?」

姉さんって言うのは、俺の姉で、トータルビューティーコーディネーターをしている詩乃のことだ。

心配性の詩乃は、俺が極度の虚弱体質で、同僚の交通事故を間近で見てしまったショックで喋れなくなったのを心配し、押し掛け同居を始めた。

かれこれ、4年近くになる。