……すみません

一通り、窓を開けた沢山江梨子が、俺を見下ろしている。

しきりに観察しているようで、何だか癪に障る。


「いいわ。結城くん、その感じ。イメージが沸いてくるわ」


クソッむかつく。
売れっ子作家ではなく、うちの社が関わってなきゃ、嫌みや文句の1つ言ってやりたい。


「あ~、その顔。もっと睨んでちょうだい」


……面白がってんじゃねぇよ


言うに言えない言葉をグッと飲み込む。


「由樹、車で来たんだろ? 運転、大丈夫か? 黒田さんを……」


「もう返しちゃうの? イメージが膨らみ始めたばかりなのに~」

俺は沢山江梨子の言葉にキレそうだった。

窓を開けても香水の匂いが充満した部屋で、懸命に息苦しさを耐えている俺を前にして……。


「具合が悪いなら、ゆっくり休んでいていいのよ。貴方なら、ずっと居てくれても構わないわよ」