「由樹、相田がピンチだ。沢山江梨子がヒステリー起こして、お手上げらしい」

俺は溜め息混じり、席を立つ。


――またですか? 俺、沢山江梨子きらいなんだけど

メモ帳に素早くボールペンを走らせて、思い切り不機嫌な顔をしてみせながら編集長「渡部篤史」に見せる。


「まあ、そう言わず相田の救援に行ってくれないか」

――同業者として、プライドはないんですかね


「由樹!? 何もそこまで言わなくても……次回作の打診の件もあるんでな」


――わかりましたよ。行けばいいんでしょう、行けば

俺は渋々、準備を始める。

消臭スプレー、消毒液、除菌シート、ミネラルウォーター……etc.


沢山江梨子対策は、いつもの準備の数倍も慎重だ。


「由樹、大丈夫?」

黒田さんが心配顔で、俺の顔を覗きこむ。

――ヤバイ時はメールします