「声が出ないって不便じゃないですか? 何か、喉のご病気をされたんですか?……昼間の酸素吸入と関係あります?」

不躾で無遠慮な質問だと思う。

だけど、結城さんがあのゴースト疑惑真相謝罪会見で見せた爽やかな笑顔が、印象的で喋れなくなったことを受け入れられずにいる。

5分ほど車を走らせたと思う。

雨はまだ、激しく降っている。
結城さんは、駅前のバス停で車を停めた。
濡れないように屋根のある場所を選んで。


メモ帳にボールペンを走らせて、後部座席の私を振り返り、メモ帳を見せる。


――喋れないのには、もう慣れた。喉の病気ではなく精神的なものかもな。
酸素吸入は呼吸器疾患と心臓疾患。出版は興味ない。
思うように書いてるだけだから


こたえてくれると思っていなかった。
車を停めて、「はい、さよなら」ってメモを向けられるんだと覚悟していた。