結城さんが、恐ろしげなことをサラリとこたえる。
ボールペンを握る手が強張る。


――じゃーな

微かに微笑んで、くるりと背を向ける後ろ姿。


――あれは、きっと冗談だ

そう思うことにして、一礼した。

顔を上げると鋭い視線が、こちらに幾つも向けられている。

気づかないふりをして席につき、パソコンとにらめっこしながら書類作成を再開する。

定時まで、約1時間。
がむしゃらにキーボードを叩く。

定時5分前、やっと書類を仕上げ、結城さんが仕上げてくれた書類と一緒に仕訳して、各々の依頼者に手渡す。


「お待たせしました」

ドヤ顔したいけど、淑やかに涼しい顔で。


――結城さん、感謝感激


心の内はルンルンで、定時を知らせる音楽が、今日ほど心地好く感じられたことはない。


机の上を整理しUSBにデータを保存し、パソコンの電源を切る。