和泉に会って何を話せばいいのか、頭の中を整理しながら、車を走らせた。

紗世への気持ちが薄れたわけではない。

紗世を忘れることなど、考えられない。

だが、俺は和泉の電話番号を選んだ。

その事実をしっかり受け止めるべきだと、自分自身に言い聞かせた。

詩乃にはメールで、紗世への報告とリハビリを済ませたこと、午後からコンツェルンに行くことを伝えた。

喫茶店に着くと、和泉が窓際の席で待っていた。

「カチッとしたスーツ姿も決まってますね」

俺が席に着くなり、和泉は笑みを零した。

「会長代行だからな。着崩すわけにはいかないからな」

俺はそう言いながらも、ネクタイを緩めた。

「結城さんの声、久しぶりに聞きます」

「──まだ、嗄れ声しか出ないがな。肺活量も以前よりだいぶん落ちているし、喉自体も弱っているから、元の声に戻るどうかはわからないが」