一方的に話す和泉の声が、少しずつ鼻声に変わっていく。

「おい……ちょっと待て。俺は姉に電話を掛けたつもりが何故か、君に掛かって……その……紗世には受賞を報告して、紗世の両親にも会ってきた」

俺は自分が何を慌てて話しているんだろうかと思いつつ、紗世の家を出た後リハビリに行き、この後ひと息入れ、コンツェルンに顔を出す予定だと、伝えていた。

「あの……お昼休みで、今からランチに出ようと思っていました。青汁で済ませないなら、一緒に。えーと、会社近くの穴場のお店で待ち合わせなんてどうですか?」

「強引な奴だな。わかった。手違いでも電話したのは俺だ。ランチを2つ注文して待ってろ」

和泉の嬉しそうな返事を聞き、電話を切った。

紗世の仏前に今し方、手を合わせてきたばかりだ。

自分自身を薄情だなと思った。