俺は嗄れ声を絞り出し、懸命に訴えた。

「俺には紗世との約束が、紗世との夢がまだ……」

「紗世は君を見守っているよ。今まで、じゅうぶん苦しんだんだから君は自由になりなさい。結城くん、君は幸せになりなさい。紗世もきっと、そう願っている」

紗世のお母さんの隣で、話を聞きながらずっと頷いていた紗世のお父さんが、俺を包み込むような眼差しで見つめていた。

紗世の仏前に手を合わせ、紗世の両親に見送られ、紗世の家を出た。

車を走らせ、病院に向かい久々に、リハビリを行った。

声が出るようになったことを療法士は大層驚きつつも、喜んでいた。

今後のリハビリを話し合い、病院を出る。

駐車場から詩乃に連絡を入れようと、スマホを操作した。

「結城さん? 那由多賞おめでとうございます」

「!?……だれ? 俺は詩乃に……」