俺はずっと書き続けていくことを紗世に誓い、紗世の家にも報告に伺った。

「良かった、声が出るようになったのね」

仏前に手を合わせた俺に紗世のお母さんが、涙ながらに言った。

「紗世の机の引き出しに花束の予約用紙が入っていたのよ。貴方が那由多賞受賞したら、何の花を注文するか詳しくメモ書きして、メッセージの言葉まで決めて、大事にファイルしてあったの」

「──!?」

「那由多賞候補選考になった、貴方が知らせに来た後、花屋に事情を話して予約したの。紗世の、あの子の願いを形にする時だと思ったの」

何かを言わなければと思うのに、言葉が出てこなかった。

「『空と君との間には』には紗世が溢れていたわ。仕事に悩んでいたあの子や、生き生きと仕事をしていたあの子も、私が知っているあの子だけでなく、あなたと過ごしたあの子も……ああ、あの子は本当に幸せだったんだと作品を読んで心から思えたの」