コンツェルン会長代行に本腰を入れるためにと、新調した数着のスーツの内から、黒いスーツを着込んだ。

紗世の墓前に花を手向け、深々と祈った。

「紗世、声をありがとうな。君との約束、那由多賞を受賞できた。君がいなくなってからは毎回の締切が地獄だった……」

「空と君との間には」は、薄紙を剥がすように色彩が豊かになっていく演出を心掛けた作品だった。

色が鮮やかになりすぎないように、淡い色彩を意識し、沢山江梨子の「空を詠む」との対比を頭に入れて書き続けた。

「限りなくグレーに近い空」が好評だったことも、また沢山江梨子とのコラボ企画も、プレッシャーだった。

「約束を果たすステップとして君を思い、君との日々を思い出しながら、懸命に書き続けた……『空と君との間には』で那由多賞を受賞できたのは、君がずっと見守ってくれていたからだな」