黒田さんが俺を心配して、西村先生から日本酒の瓶を遠ざけた。

日付が代わる20分前になり、ようやくお開きになり、詩乃がタクシーを数台手配した。

編集長が梅川先生と西村先生を引き受け、黒田さんが沢山江梨子と、相田さんと加納らがタクシーに乗りこんだ。

俺はやっと宴から解放され、詩乃の後片付けを手伝い、詩乃の用意してくれた甘さ控えめのケーキを一切れ味わった。

「詩乃。明日、紗世に報告してくる」

「しっかり、お礼をしてきなさい。紗世さんの好きだったケーキ焼くから持っていきなさい」

「うん……詩乃、俺は書いていくよ。これからもずっと。コンツェルンの仕事は大変だけど、ずっと書いていくよ」

「ええ」

長い1日を終え、俺はベッドに倒れ込んだ。

疲れきっているのに、何故か心地良かった。

重くのしかかった雨雲が、やっと晴れた──そんな気がした。