「紗世くんと君の名コンビは見ていて実に楽しかった。紗世くんがいなくなり、君は執筆をしなくなるのではと心配したが……いや~那由多賞受賞とは」

西村先生が俺の肩をギュッと抱き寄せ、離そうとしない。

「結城くん、君が担当でなくなるのは寂しくてたまらんよ」

日本酒を煽りながら、西村先生はむせび泣いた。

「始まった……」

編集長が眉を下げ「おい、加納。何か面白い芸はないのか」と、加納をつつく。

「ありませんよ。だいたい結城さんに敵う担当はいませんよ。俺、結城さんの神対応観て落ち込んだんですから」

俺は西村先生に体を撫でられながら「先生、邸宅へは定期的に伺わせていただきますから。先生との交流は俺にとっても貴重な時間でしたから」と、宥めてみる。

「結城くん、儂はな。君の作品を読むたび、君のことが恋しくなる」