「由樹、会見に」
詩乃に促され、玄関に向かう。
ドアを開けると、近所の花屋の青年が花束を抱えて立っていた。
「万萬詩悠さん? 麻生紗世さんからです。サインをお願いします」
何を言われているのか解らず、立ち尽くしていると、花屋の青年は「麻生紗世さんからです」と繰り返した。
伝票の差出人を注視する。
確かに麻生紗世と書かれていた。
間違いなく紗世の字だった。
花束に添えられたメッセージカードの「万萬詩悠先生、那由多賞受賞おめでとうございます。先生の1番のファン麻生紗世」と書かれた文字も、確かに麻生紗世のものだった。
「──さ……よ」
視界が涙で滲んだ。
頬に冷たいものが伝った。
「……あの、万萬さん!?」
俺は花束を両手で受け取り胸に抱きしめ、玄関に座り込み、嗚咽しながら紗世の名を何度も呼んだ。
詩乃に促され、玄関に向かう。
ドアを開けると、近所の花屋の青年が花束を抱えて立っていた。
「万萬詩悠さん? 麻生紗世さんからです。サインをお願いします」
何を言われているのか解らず、立ち尽くしていると、花屋の青年は「麻生紗世さんからです」と繰り返した。
伝票の差出人を注視する。
確かに麻生紗世と書かれていた。
間違いなく紗世の字だった。
花束に添えられたメッセージカードの「万萬詩悠先生、那由多賞受賞おめでとうございます。先生の1番のファン麻生紗世」と書かれた文字も、確かに麻生紗世のものだった。
「──さ……よ」
視界が涙で滲んだ。
頬に冷たいものが伝った。
「……あの、万萬さん!?」
俺は花束を両手で受け取り胸に抱きしめ、玄関に座り込み、嗚咽しながら紗世の名を何度も呼んだ。