『リハビリもカウンセリングも気休めだろ。リハビリに関しては、喉や声帯自体が悪いわけではないし、カウンセリングも原因は判っているのに毎回同じこと訊いてくる』

「声が出なくても……喋れなくてもいいの?」

『幾ら頑張ってもダメなんだから仕方ないだろ。それにリハビリけっこうハードで体力消耗するし、リハビリ中に発作が起きるのも度々で……今は倒れるわけにはいかない』

俺の手話を読み取り、詩乃は「やっぱり、貴方の秘書を」と言いかけた。

『会長秘書や社長秘書が何人もいる、俺が1人くらい使っても大丈夫だろ。それに、いちいち秘書に指示するよりも自分で動いた方が早い。俺は体調、ちゃんと考えて動いてるから。詩乃、俺は声を諦めいるわけではないからな』

「わかったわ」

眉間に皺を寄せていた詩乃の顔に笑みが戻るのを待っていたように、体温計のアラームが鳴った。