「良いところにいらっしゃいましたわ。パソコンの使い方がわからなくて、お困りですのよ」

西村先生の後ろから暢気そうな声がした。

「結城さんがコンツェルンを継がれ、会社を辞められると聞いて、先生ったらパソコン教室に通い始めましたのよ」

──それは進歩的な選択ですね

西村先生は俺と家政婦のやりとりに苛つきながら、俺の手を引き、書斎へと急いだ。

「パソコン教室で梅川先生とご一緒になったとかで、どちらが先に上手くなるか競っていらっしゃるんですよ」

西村先生はバツが悪そうに「余計なことを」と咳払いした。

──どちらの教室に通っておいでですか?

「結城コンツェルンの人材派遣部門にあるITスペシャリスト育成講座の初心者コースだ」

──水臭いですね。お声を掛けてくだされば教室に出向き、ご教示致しますのに。講座のマニュアルよりわかりやすく