「結城くんが結城コンツェルンの御曹司だとは聞いていたが、会長代行とはね。まだ信じられんよ」

──俺自身まだ実感が湧かないんです。取引先や下請けの挨拶回りに追われています

「記者会見は堂々としたものだったし、カメラ写りもなかなかのものだった」

「あっ、それ観ました。あの時は眼鏡、DJクラシックのスクエア型ウェリントンMIXモデル掛けていましたよね。カッコ良かったです。今日は……菖蒲ですよね。一昨日はドルテガッパーナでした」

──眼鏡は服に合わせ代えている。先生、打ち終えました。変更がありますか?

メモを添え、プリンターで打ち出した原稿を梅川先生に手渡す。

梅川先生は真剣な様子で原稿を読みながら、加納が淹れたお茶を啜った。

「まだまだだな。結城くんの淹れたお茶には……」

──特別なことはしていませんよ