黒田さんの事故や後輩を巻き込んだトラブルで、人と本気で向き合うことを拒んでいた俺の頑なに閉ざした心を開いた。

──彼女とは数ヶ月だったが、俺には彼女と出会わなかったらが想像できない。彼女は俺の体の1部だ

和泉は画用紙に書いた俺の文字を読み終え、無言で数回頷いた。

──総務部の仕事は懐かしかったし、お局様の緩んだ顔は楽しめた。いつも16時を過ぎると、君が残業ではないかが気になった

和泉はどう答えればいい? と言いたそうな顔で俺を見る。

──すまないな。気の利いた言葉が出て来ない。君の食べっぷりの良さは気持ちいいし、いい息抜きになる。さすがに残業の手伝いは無理だが、大丈夫か?

「何でそんなに優しいんですか? 大丈夫じゃないと言ってしまいそうになるじゃないですか」

和泉が懸命に笑顔を作ろうとしていた。

その様子がいじらしくて、彼女の頭にそっと手を伸ばし、ポンポンと撫でた。