──はあ? 大学で学んだこと、資格を全て活かせる。それに癖の強い作家の相手をしてきたことも、後輩の育成も、これからの仕事に活かしていける。実力で挑める願ってもない機会だ

和泉の顔が今にも泣き出しそうだった。

──何処に居ても何をしていても俺は俺だ。それに万萬詩悠久の原稿を入れに、社に寄った時には声を掛けるし、いつでもメールして来い。話す時間くらい作る

「いいんですか? わたし、毎日でもメールしますよ」

和泉は嗚咽し、頬を涙で濡らした。

──君なら許すよ

「結城さん。わたし……結城さんが、結城さんのことが好きです」

和泉の突然の告白に胸が跳ね、どう応えていいかわからなかった。

──今、俺はコンツェルンのことでいっぱいいっぱいだ。だが……君と居ると心が和む、それが何のかを考える余裕はない

「麻生紗世さんとの約束もあるからですか」