和泉の顔がにわかに曇った。

眉を下げ、唇を噛み締め、泣き顔になる。

──作家はやめない。コンツェルンに入ることでネタも増えるからな

和泉は目を丸くし、俺をマジマジと見つめた。

──今からコンツェルンに行くが、お茶を飲む時間くらいはある。残業がないならどうだ? 駐車場で待っている

和泉は2つ返事だった。

10分で駐車場に降りてきた。

「定時後にコンツェルンの仕事をしているんですか?」

和泉は助手席に座ると、俺の顔を覗き込んだ。

──まあな。残業はしたくないがそうも言っていられない。祖父にいつまでも頼っているわけにもいかないし、親父以上の仕事をしていかなきゃならないからな

信号待ちで、素早く返事を画用紙に書き込む。

「結城さんが会長になるんですか?」