コンツェルンの内情は思っていた以上に厳しく、父や兄たちが如何に苦労しているかを実感させられた。

父の代行で兄と下請けや取引先へ足を運ぶと、頭の先から爪先まで舐めるように見つめられた。

「そんな体で、お前に会長代行が務まるのか」

あからさまに言う相手もいる。

更に、筆談を始めると何処に行っても険しい視線を向けられる。

が、下請けや取引先の経営状況、業績、受注内容や納期状況など詳細に調べての訪問で、相手に付け入る隙を与えない。

また重役と商談先へ同行する際には、事前に詳細な情報を踏まえた上で、重役が何処まで話を詰めているのかを詳しく聞いて、訪問する。

重役が数ヶ月掛かってまとめられなかった商談を片っ端から次々に成立させ、重役に「多額の交際費は必要ない」ことを突きつけていった。

出版社の方は作家宅を後輩と訪問すると、一様に「残念だ」とこぼされた。