その沢山江梨子を本気にさせたとして、万萬詩悠の連載「空と君との間には」は、人気に火が点いた。

円山夏樹出版社の月刊誌「小説 野草」は、沢山、万萬の両者が連載を競うように執筆していると評判になった。、

以来毎月売上を伸ばし続けているらしい。

万萬詩悠こと結城さんが課長昇進したことは、女子会で総務部の先輩から、またその話ってくらい聞かされる。

だけど、結城さんが喋れなくなっていて、筆談するってことは、入社して半月。
今日の今日まで、誰も教えてくれなかった。

何で!? って疑問。
私が鈍いのか、疎いのか、単に聞かなかっただけの偶然か……。

色んな疑問が沸いてくる。

「今日中」って付箋が付いた書類を兎に角、片っ端から片付けなきゃ、帰れないなと、気合いを入れる。

そこに、気持ちを削ぐような内線電話。

チッと舌打ちをして、電話をとる。


「はい。総務部、和泉です」