「150万部目前だ──『空と君との間には』の売れ行きが凄い勢いで伸びている」

発売開始から1ヶ月半が過ぎ、営業がやたら騒いでいた。

全国の本屋で売り切れが続発し、発売から増刷を繰り返していると、嬉しい悲鳴が俺の耳にも入ってくる。

「空と君との間には」の売れ行きに便乗し「限りなくグレーに近い空」も売上を伸ばしていると聞いた。

「空と君との間には」と同日発売した沢山江梨子の「空を詠む」を3倍以上引き離しているらしい。

そんな矢先の12月中旬。

下半期の「芥良山賞」と「那由多賞」の候補が各々5作品、発表された。

「芥良山賞」は純文学作品を対象とし、作家の登竜門とされ、新人作家の作品が選ばれる。

「那由多賞」は大衆文学を対象とし、中堅やベテラン作家の作品が選ばれる。

「ヘェ~『那由多賞』か──無山浩の『空飛ぶ公務室』葉村鰭『鯛ノ記』満城眼勉『孫悟空出奔』沢山先生の『空を詠む』匆々たるメンバーに並んで、やるじゃないか由樹!」