和泉は結城に社内で初めて声をかけた時よりも、結城の表情が、数段も暖かく感じた。

「いえ、以前に案内されたお店もとても美味しかったですし」

──実を言うと俺は此処より、あっちの方が好きだ

「えっ──!? いいんですか」

──好みも体調も知ってもらった上で、我が儘も利いてもらえる店はそうそうないからな。此処の料理は塩分糖分カロリー控えめだが、それでも俺にはまだ塩分糖分が多いんでね

結城は和泉が美味しそうに食べる側で、自分は殆ど箸が進んでいない。

和泉には上品な丁度良い味で、これ以上の薄味は想像もつかない。

──普通に美味しいものを美味しく食べられるんだから、余計なことを考えず味わえよ。美味しそうに食べる姿は癒やされる

和泉は面と向かって言われ、くすぐったい気持ちになった。

──食べたいものや行きたい店があったら、声をかけろよ。連れて行ってやるから